かつてモロッコに住んでいたベルベル人、サラセン帝国の支配下にあったスペイン、シシリーのムーア人をモチーフにしたブラッカムーアと呼ばれるオニキスに彫刻されたカメオ。通常黒い層をベースにその上の白い層に人物を彫るのが一般的ですが、これは逆に黒い層に黒人の若い女性を彫りこんでいます。
黒人のモチーフのカメオは古代ギリシャ、ローマ時代からあり、その後のメディチ家のコレクションの中にも黒人のアルテミスのカメオを見ることが出来ます。18世紀頃から主にヴェネチアで作られるようになりその後フランスにおいても製作されていますが、ヨーロッパ人の異国趣味と呼ばれる物で非常に珍重されていました。

ブラッカムーアのカメオは大変クオリティーの高い物が多く、数も少ないためコレクターの間で大変人気を呼んでいます。
特にアビレと呼ばれる、カメオの上に直接宝石をセッティングする装飾は大変高度な技術を要し、この作品の場合はイヤリングとディアデムにローズカットのダイヤモンドが施されています。

また、顔の表面はつや消しされ、髪の部分は光沢を出すように磨き上げられていますが、この光沢を出すのは大変な作業のようです。周りのフレームも大変凝っていて、ブラックエナメルとパールの白のコンビネーションが、オニキスの色合いとうまく調和して作品を際立たせています。
バチカンの一番トップにオニキスを入れ、ちょっと遊び心が見えますね。

1860-80年頃

フランス or イタリア